1枚ごとに説明を付けられるかで判断する
「症例写真を見せてほしい」と患者に言われる。スタッフは「インスタに載せれば反響があるはず」と提案する。――美容皮膚科や歯科、形成外科などで、治療前後の写真の扱いに悩む院は少なくありません。医療法施行規則は、治療等の内容や効果について患者等を誤認させるおそれがある治療前後の写真の広告を禁じています。一方で、厚生労働省の医療広告等ガイドラインは、詳細な説明を付した場合はこれに当たらないとしています。本記事では、ガイドライン、Q&A、事例解説書(第6版)を確認したうえで、掲載できる条件、付けるべき説明の項目、加工や撮り方の注意、SNS・Googleマップでの扱い、患者の同意の取り方までを、院内のチェック表として使える形に整理します。
医療広告におけるビフォーアフター写真のルールとは、治療等の内容や効果について患者等を誤認させるおそれがある治療前後の写真の広告を禁じる医療法施行規則第1条の9第2号の規定と、通常必要とされる治療内容・費用や主なリスク・副作用等の詳細な説明を付した場合はこれに当たらないとするガイドラインの考え方のことです。治療効果は広告可能事項ではないため、掲載できるのは公式サイトなど限定解除の要件を満たせる媒体に限られます。
- 写真ごとに、治療内容、治療期間・回数、費用、主なリスク・副作用を写真のすぐ近くに付ける
- リンク先やクリックで開く欄だけに説明を置く、複数の写真にまとめて1つの説明を付ける、極端に小さな文字で書く形式は不可
- 加工・修正した写真は虚偽広告、撮影条件を変えて効果を強調した写真は誇大広告として扱われる
- 術前のみ・術後のみの写真やイラストも、説明がなければ広告できない
- 根拠は医療法第6条の5第2項第4号に基づく医療法施行規則第1条の9第2号。ガイドラインは、詳細な説明を付した写真は「誤認させるおそれがある写真」に当たらないとしている
- 治療効果に関する事項は広告可能事項ではないため、限定解除の対象とならない媒体(看板、チラシ、バナー・リスティング広告など)では治療前後の写真は広告できない
- 説明は、写真ごとに、写真の近くに。事例解説書は、リンク先やクリックしないと表示されない説明、複数の写真へのまとめた説明を違反例としている
- あたかも効果があるように見せるための加工・修正は虚偽広告。撮影条件や被写体の状態を変えて効果を強調するのは誇大広告
- SNSでは1投稿が1つの広告として扱われる。院のサイトへのリンクだけでは説明の要件を満たさない
症例写真の掲載場所と説明の付け方を、媒体ごとに点検したい方へ
公式サイトの症例ページ、Googleビジネスプロフィールの写真、Instagramなどの投稿について、治療前後の写真の有無、説明の項目と位置、同意の管理状況を確認し、外すべき写真と直し方を整理します。
無料MEO診断の内容を見る →最終確認日:2026年10月15日。医療広告等ガイドライン(令和8年3月30日最終改正)、同Q&A(令和8年3月改定)、事例解説書(第6版)、e-Gov法令検索の医療法施行規則・個人情報の保護に関する法律を確認しています。法令・ガイドラインは改正されることがあります。本記事は運用情報であり、個別の写真や説明が規制に適合することを保証するものではありません。
RULE治療前後の写真のルール|条文とガイドラインの位置づけ
治療前後の写真は、体験談と並んで医療法施行規則第1条の9に禁止事項として定められています。同条第2号は「治療等の内容又は効果について、患者等を誤認させるおそれがある治療等の前又は後の写真等の広告をしてはならないこと」としています。
ガイドラインは、この規定がいわゆるビフォーアフター写真を指すとしたうえで、その理由を「個々の患者の状態等により当然に治療等の結果は異なる」ためだと説明しています。ある患者で得られた変化を見せると、見た人は自分にも同じ結果が出ると受け取りやすい。この「自分も同じようになる」という誤認を防ぐことが、規制の目的です。
そのうえでガイドラインは、術前又は術後の写真に、通常必要とされる治療内容、費用等に関する事項や、治療等の主なリスク、副作用等に関する事項等の詳細な説明を付した場合は、これに当たらないとしています。つまり、写真が一律に禁止されているのではなく、判断材料となる説明とセットであれば掲載し得るという構造です。
ガイドラインは、治療効果に関する事項は広告可能事項ではないため、限定解除の要件を満たす対象でない場合は、術前術後の写真等は広告できないとしています。看板、ポスティングのチラシ、バナー広告、リスティング広告など、限定解除の要件①を満たさない媒体には載せられません。限定解除の要件そのものは限定解除の4要件と自由診療ページの作り方で整理しています。
CONDITIONS掲載できる条件|「詳細な説明」に入れる項目
詳細な説明には、少なくとも、通常必要とされる治療内容、治療期間と回数、費用、主なリスク・副作用を含めます。事例解説書の改善例は、これに症例の概要(年代・性別・治療部位)を加え、写真1組ごとに表形式で並べています。
| 項目 | 書く内容 | 不十分になりやすい例 |
|---|---|---|
| 症例の概要 | 年代・性別、治療した部位や状態の概要(個人が特定されない範囲で) | 「〇〇の症例」とだけ書き、どんな状態からの治療か分からない |
| 治療内容 | 行った治療の方法と流れ。自由診療であればその旨 | 治療名だけ、または「当院独自の施術」など内容が分からない書き方 |
| 治療期間・回数 | その症例で要した期間と回数(例:約6か月、10回) | 記載なし、または「最短1回」など最小値だけ |
| 費用 | その症例の総額と、含まれる内訳(検査・診断、処置、薬剤など) | 「〇〇円〜」の最低金額だけ、費用の記載なし |
| 主なリスク・副作用 | その治療で起こり得る主なリスク・副作用 | 「個人差があります」のみ、または「ダウンタイムはほとんどありません」のような利点の説明 |
事例解説書は、インプラント治療の改善例として、症例の概要(30代女性、事故で失った臼歯)、治療内容、治療期間・回数(約6か月間、10回)、費用(自由診療であること、総額と内訳)、リスク・副作用(出血、腫張、疼痛など)を写真の直下に並べた例を示しています。数字は例示であり、相場を示すものではありません。また事例解説書は、改善例は一例であり、実際のサイトの全体の構図や医学的状況などを考慮して誤認を与えない対応が必要だとも付記しています。
「個人差があります」「効果には個人差があります」という一文は、リスク・副作用の説明の代わりにはなりません。Q&Aは、デメリットを一部だけ書いた例について、それだけでは要件を満たしているとは認められないとしています(Q6-12)。説明の中身は担当医が確認してください。
NG PHOTOS掲載できない写真|加工・撮影条件・片方だけの写真
説明を付けても掲載できない写真があります。効果があるように見せるための加工・修正は虚偽広告、撮影条件や被写体の状態を変えて効果を強調するのは誇大広告として扱われます。また、術前だけ、術後だけの写真やイラストも、説明がなければ広告できません。
| 写真の例 | 扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| あたかも効果があるかのように見せるため加工・修正した術前術後の写真 | 虚偽広告(罰則付き) | 医療法第6条の5第1項、ガイドライン第3-1の1(1) |
| 施術していないフリー素材の画像や、人物写真を分割して片方だけを修正した「術前・術後風」のイメージ | 虚偽広告 | 事例解説書(3) |
| 撮影条件や被写体の状態を変えて撮影し、効果や有効性を強調する写真 | 誇大広告 | 医療法第6条の5第2項第2号、ガイドライン第3-1の1(3) |
| 術前のみ、または術後のみの写真 | 説明がなければ広告できない | Q2-8、事例解説書(22) |
| 術前・術後のイラスト、病人が回復して元気になる姿のイラスト | 説明がなければ広告できない。回復を保障すると誤認させるイラストは誇大広告 | ガイドライン第2の3、事例解説書(22) |
| 診療風景の写真に治療前後の比較が含まれるもの | 治療効果の表現に当たり広告できない | Q3-14 |
どこからが「加工」かについて、ガイドラインは明るさや色味の補正に関する具体的な線引きを示していません。判断の軸は、実際の変化以上に効果があるように見えるかどうかです。院内では、術前・術後を同じ機材、同じ距離・角度、同じ照明、同じ背景で撮る撮影手順を決め、補正をしない運用にしておくと、説明が求められたときにも根拠を示しやすくなります。個別の補正の可否で迷う場合は、所管の保健所等に確認してください。
PLACEMENT説明の置き方|写真ごとに、同じ場所で
説明の項目がそろっていても、置き方が不適切だと要件を満たしません。ガイドラインは、リンク先のページへの掲載や、利点と比べて極端に小さな文字での掲載を採用してはならないとしており、事例解説書は、複数の写真にまとめた説明や、クリックしないと表示されない説明も違反例としています。
症例写真を6組並べ、ページ下部に「費用・リスクは料金ページをご覧ください」「いずれの症例も治療期間1〜2回、費用15万円〜」とまとめて記載。
リンク先に説明を置く形式、複数の写真へのまとめた説明、最低金額だけの費用表示が重なっている。
症例ごとに、写真の直下へ「症例の概要/治療内容(自由診療)/治療期間・回数/費用(総額と内訳)/主なリスク・副作用」を同じ文字の大きさで記載。
その症例の写真を見た人が、その場で判断材料を読める配置になっている。
- 説明は写真の直下か横に。スマートフォンで表示したときも、写真と説明の間に別の要素が挟まらないかを確認する
- 「+詳細を見る」で開閉する欄や、画像をクリックした先にだけ説明を置かない
- スライダーで複数の写真を切り替える形式では、表示中の写真に対応する説明が常に見える状態にする
- リスクの文字を、効果の説明や見出しより極端に小さくしない。背景と同系色の文字にしない
MEDIA媒体別の扱い|公式サイト・SNS・動画・Googleマップ
治療前後の写真は、限定解除の要件を満たせる媒体で、写真ごとに説明を付けられる場合にだけ掲載できます。SNSや動画は、投稿や動画の中で説明が完結している必要があり、院のサイトへのリンクだけでは足りません。
| 媒体 | 扱い | 注意点 |
|---|---|---|
| 公式サイトの症例ページ | 要件を満たせば掲載し得る | 限定解除の要件(問い合わせ先など)と、写真ごとの詳細な説明の両方を満たす |
| Instagram・XなどのSNS投稿 | 投稿ごとに要件を満たす必要 | 事例解説書は、プロフィール・投稿・返信の一連の中で、画像の付近に一体的かつ一覧性をもって説明する必要があり、自院サイト等の別リンク先での記載は違反としている |
| YouTubeなどの動画 | 動画内で要件を満たす必要 | 動画内の一連の流れで、画像の付近に説明を付ける。「比べてみれば効果は歴然!」のような強調は避ける |
| サイト内のバナー画像 | 写真だけのバナーは不可 | 事例解説書は、バナー画像やリンク先の公式SNSにビフォーアフター写真だけを載せる例を違反例としている |
| Googleビジネスプロフィールの写真・投稿 | 載せない運用を推奨 | 写真ごとに十分な説明を付けにくく、限定解除の対象となる媒体に当たるかも判断が分かれ得る |
| 看板、チラシ、バナー・リスティング広告 | 掲載できない | 限定解除の要件①を満たさないため、治療効果に関する写真は広告できない |
Googleマップのプロフィールには、外観・受付・待合・診療室(無人)など、広告可能な施設・設備の写真を載せるのが基本です。選び方はGoogleマップ写真の選び方、動画の注意点はプロフィール動画の注意点で扱っています。患者が自分で投稿した写真の扱いや削除依頼は、患者投稿写真の削除依頼を参照してください。
CONSENT患者の同意と個人情報|撮影から削除までの手順
医療広告のルールとは別に、患者の写真は個人情報です。診療のために撮影した写真を広告に使うことは、診療という利用目的を超える利用になり得るため、個人情報の保護に関する法律の考え方からも、あらかじめ本人の同意を得ることが前提になります。
個人情報の保護に関する法律第18条は、あらかじめ本人の同意を得ないで、特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて個人情報を取り扱ってはならないとしています。また、病歴は同法第2条第3項の要配慮個人情報に含まれます。治療部位や治療内容と結びついた写真は慎重に扱い、同意の取り方は個人情報保護委員会と厚生労働省の医療・介護関係事業者向けのガイダンスもあわせて確認してください。
掲載の目的と範囲を説明する
どの写真を、どの媒体(公式サイトのみか、SNSも含むか)に、どの説明とともに、どのくらいの期間載せるかを具体的に説明します。
媒体ごとに同意を分ける書面で同意を得る
同意書に、写真の範囲、目隠しなど個人が特定されないための加工の有無、掲載媒体、掲載期間、撤回の方法を記載し、署名を得て保管します。
掲載への協力を条件に値引きしない撮影手順を統一する
術前・術後で機材、距離、角度、照明、背景をそろえ、撮影日を記録します。補正はしない運用にします。
撮影条件の差は誇大の原因掲載前に医師と担当者が確認する
説明の項目、位置、文字の大きさ、症例の概要が個人の特定につながらないかを確認し、承認者と日付を記録します。
掲載台帳をつくる撤回・期限切れのときは速やかに外す
撤回の申し出や掲載期間の終了時に、サイト・SNS・過去の投稿・広告素材から写真を外し、外した日を記録します。
SNSの過去投稿も対象事例解説書は、症例モニターとして治療を受ける場合に通常価格から割引される旨を強調する例を、費用を強調した広告の例として挙げています。写真提供と引き換えの値引きを広告で打ち出すことは避けてください。
CHECKLIST掲載前チェック表
治療前後の写真を1組載せるたびに、次の12項目を確認します。1つでも「いいえ」があれば掲載を見送り、直してから再確認します。
写真と媒体
- 限定解除の要件を満たせる媒体か(看板・チラシ・広告文ではないか)
- 効果を大きく見せる加工・修正をしていないか
- 術前・術後で撮影条件(機材・距離・角度・照明・背景)がそろっているか
- 自院で実際に行った治療の、その患者本人の写真か
- 本人の書面による同意があり、媒体と期間が同意の範囲内か
- 個人が特定されない配慮をしたか
説明と置き方
- 症例の概要、治療内容、期間・回数、費用、主なリスク・副作用がそろっているか
- 説明が写真ごとに、写真の近くにあるか(リンク先・開閉欄・まとめ書きでないか)
- リスクの文字が効果の説明より極端に小さくないか
- 「効果は歴然」「必ず」「痛みはありません」などの表現がないか
- 患者の感想(体験談)を添えていないか
- 担当医の確認日と承認者を記録したか
写真に患者の感想を添えると、体験談の禁止に触れます。体験談の扱いは別の記事で詳しく扱います。全体の規制の考え方は医療広告ガイドラインの基本で確認できます。
COMMON MISTAKES治療前後の写真でよくある失敗6つ
説明が一切ない写真は、事例解説書の典型的な違反例です。1組ごとに説明を付けられないなら掲載を見送ります。
リンク先への掲載は認められていません。費用とリスクは写真の近くに書きます。
術後のみの写真も、説明がなければ広告できません(Q2-8)。メインビジュアルには院内の写真などを使います。
撮影条件を変えて効果を強調すると誇大広告として扱われます。撮影手順を統一します。
SNSでは投稿の中で説明が完結している必要があります。別リンク先での記載は違反例とされています。
公式サイト用に同意を得た写真を、SNSや広告に転用しない。媒体と期間を台帳で管理します。
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FAQよくある質問
「効果には個人差があります」と書けば、写真を載せてもよいですか?
保険診療の治療でも、写真のルールは同じですか?
明るさやトリミングの調整も「加工」に当たりますか?
Instagramに症例写真を載せるには、どうすればよいですか?
Googleビジネスプロフィールに症例写真を載せてもよいですか?
患者の同意があれば、説明なしで写真を載せられますか?
他院の写真やフリー素材を「イメージ」として使えますか?
SUMMARYまとめ|写真は「説明とセット」でしか成り立たない
今日から進めるならこの順番
治療前後の写真は、患者にとって判断の参考になる一方、最も誤解を生みやすい情報でもあります。その写真を見た人が、その場で治療内容、期間、費用、リスクまで確かめられるか。この問いに「はい」と言える写真だけを残すことが、規制を守り、来院後の「思っていたのと違う」を防ぐ近道です。Googleマップでの写真の扱いはGoogleマップ運用と医療広告ガイドラインもあわせてご覧ください。
Googleマップと公式サイトの写真を、医療広告の観点で棚卸しします
プロフィールの写真・投稿・動画と、公式サイトの症例ページを確認し、治療前後の写真の有無、説明の不足、媒体の選び方の問題点を一覧にしてお渡しします。
無料MEO診断の案内を見る →- e-Gov法令検索「医療法施行規則」(第1条の9第2号、第1条の9の2。2026年10月15日確認)
- 厚生労働省「医療広告等ガイドライン」(PDF)(令和8年3月30日最終改正、第3-1の1(1)(3)(7)ほか。2026年10月15日確認)
- 厚生労働省「医療広告等ガイドラインに関するQ&A」(PDF)(令和8年3月改定。Q2-8、Q3-14、Q6-12。2026年10月15日確認)
- 厚生労働省「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版)」(PDF)(令和8年3月作成。事例(3)(22)〜(24)(34)(42)(47)。2026年10月15日確認)
- e-Gov法令検索「個人情報の保護に関する法律」(第2条第3項、第18条、第27条。2026年10月15日確認)
本記事は一般的な運用情報であり、個別の写真・説明が医療広告規制や個人情報保護法に適合すること、集患の効果を保証するものではありません。
対象:日本国内のクリニック・診療所の公式サイト、SNS、Googleビジネスプロフィール等における治療前後の写真の取扱い。医学的な説明の内容は担当医が確認し、個別の判断は所管の保健所など自治体の担当窓口、または専門家にご確認ください。

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