「あとどれくらいか分からない」ことから生まれる
待合で40分。後から来た人が先に呼ばれ、受付に「あと何人ですか」と聞いても「もう少しです」としか返ってこない。その日の夜、Googleマップに「2時間待たされたうえに説明もない」という口コミが投稿される——。待ち時間は、厚生労働省の受療行動調査でも外来患者の不満として最も多く挙がる項目です。ただし不満の中身は、時間の長さそのものより、見通しが立たないこと、順番の理由が分からないこと、待つ場所を選べないことにあります。本記事では、待ち時間を区間ごとに測る方法、見える化とWeb順番待ちの運用、院内掲示やWebでの案内文の例、混雑する時間帯の情報発信、口コミへの返信、待ち時間そのものを短くする打ち手を整理します。
クリニックの待ち時間対策とは、受付から会計までの待ち時間を区間ごとに測って短くするとともに、待ち時間の見込みや順番の考え方を、来院前と院内で患者に伝えることで、待つ負担と不満を減らす取り組みです。時間を短くする改善と、見通しを伝える案内の両方が必要で、どちらか一方だけでは不満は残ります。
- 受付から診察開始、診察から会計までなど、区間ごとに時刻を記録して、どこで待っているかを特定する
- 順番の進み具合や待ち時間の目安を院内とWebで示し、自宅や車で待てるようにする
- 予約の患者と予約なしの患者、急患の扱いなど、順番が前後する理由を掲示で説明しておく
- 混雑する時間帯を自院のデータで案内し、待ち時間の口コミには事実と改善の取り組みで返信する
- 厚生労働省の令和5年受療行動調査(確定数、一般病院の外来患者が対象)では、項目別の満足度で「不満」が最も多かったのは「診察までの待ち時間」で25.5%。クリニックを対象にした調査ではないが、待ち時間が不満の中心になりやすいことは共通して意識しておきたい
- 待ち時間は「受付から診察開始まで」「診察後から会計まで」など区間に分けて、時刻で記録する。全体の長さだけでは、どこを直せばよいか分からない
- 見える化(順番の表示、待ち時間の目安、呼び出しの通知)は、待つ時間を短くしなくても、待つ場所を選べるようにして負担を減らす
- 受付での呼び出しについて、個人情報保護のガイダンスは、患者の希望に応じて一定の配慮をすることが望ましいとしている。番号での呼び出しなどの選択肢を用意する
- 待ち時間の口コミへの返信では、受診の事実に触れず、待ち時間の目安の案内や改善の取り組みなど、医院の側の事実を伝える
待ち時間の口コミと、Googleマップの情報の見せ方を確認したい方へ
Googleビジネスプロフィールの診療時間・予約リンク・口コミへの返信の状況を確認し、来院前に待ち時間の見通しを伝えるために整える情報を整理します。
無料MEO診断の内容を見る →最終確認日:2026年10月15日。統計調査の数値、Googleビジネスプロフィールの表示、個人情報保護に関するガイダンスは更新されることがあります。本記事は運用情報であり、待ち時間の短縮や口コミ評価の改善、集患の効果を保証するものではありません。
DATA公的調査で見る外来の待ち時間と不満
厚生労働省の受療行動調査では、外来患者の診察までの待ち時間は「15分未満」が最も多い一方、項目別の満足度で「不満」が最も多いのは「診察までの待ち時間」でした。待ち時間は、多くの患者が気にする共通の論点です。
令和5年受療行動調査(確定数、2025年3月14日公表)は、2023年10月に全国の一般病院を利用した患者を対象にした調査です。クリニック(診療所)は対象に含まれていないため、数値をそのまま自院に当てはめることはできませんが、外来患者が待ち時間をどう受け止めているかを知る手がかりになります。
| 項目 | 結果 |
|---|---|
| 予約の状況 | 外来患者のうち「予約をした」は79.4% |
| 診察等までの待ち時間 | 「15分未満」27.8%、「15分〜30分未満」24.8%、「30分〜1時間未満」20.6%。1時間未満が約7割 |
| 項目別の満足度 | 外来で「不満」が最も多い項目は「診察までの待ち時間」で25.5% |
1時間未満が約7割という結果は、裏を返せば、残りの患者は1時間以上待っているか、回答が不詳であることを意味します。そして待ち時間の長さが同じでも、見通しが分かっている待ち時間と、分からない待ち時間では、受け止め方が違います。以下では、時間を短くする改善と、見通しを伝える案内の両面から対策を整理します。
MEASURE待ち時間を区間に分けて測る
待ち時間は、受付から会計までの全体ではなく、区間に分けて測ります。区間ごとの時刻が分かると、診察前で待っているのか、検査や会計で待っているのかが分かり、打ち手を選べます。
| 区間 | 測り方の例 | よくある原因 |
|---|---|---|
| 1. 来院から受付完了まで | 受付票に来院時刻と受付完了時刻を書く | 受付が電話対応で手が離せない、保険証などの確認に時間がかかる |
| 2. 受付完了から診察開始まで | 呼び入れの時刻を記録 | 予約枠の人数が多い、初診の問診に時間がかかる、急患の対応 |
| 3. 診察中の検査・処置の待ち | 検査の開始・終了時刻 | 検査の順番待ち、結果が出るまでの時間、担当者の不足 |
| 4. 診察終了から会計まで | 診察終了と会計完了の時刻 | 会計の計算・入力の混雑、処方の確認 |
| 5. 予約・順番取りから来院まで | Web順番待ちの記録 | 呼び出しの目安と実際の進み具合のずれ |
記録は、1〜2週間、1日数名分でも傾向がつかめます。受付票に時刻を書き込む欄を作る、予約システムや順番待ちシステムの記録を出力するなど、スタッフの負担が少ない方法を選んでください。曜日と時間帯ごとに分けて見ると、「月曜の朝」「土曜の午前」のように、集中して直すべき時間帯がはっきりします。
VISUALIZE待ち時間の見える化と呼び出しの配慮
見える化は、待ち時間そのものを短くしなくても、患者が「あとどれくらいか」を知り、待つ場所を選べるようにする対策です。院内の表示とWebでの表示を組み合わせると、待合の混雑も和らぎます。
院内での見える化
- 順番の表示(現在の受付番号、診察中の番号)
- 「現在の待ち時間の目安:約〇分」の掲示を、時間帯ごとに更新
- 急患などで遅れているときの掲示と、受付からの声かけ
- 検査や会計で待つ場合の、おおよその時間の案内
院外(Web)での見える化
- Web順番待ちでの、現在の順番と自分の順番の表示
- 順番が近づいたときの通知(メール・LINEなど)
- 公式サイトでの、曜日・時間帯ごとの混雑の目安
- 臨時の遅れや受付の締め切りのお知らせ
「待ち時間の目安」の出し方
掲示する目安は、勘ではなく記録から出します。簡単な方法は、直近1時間に診察を終えた人数から1人あたりの平均の診察間隔を出し、受付を済ませて診察を待っている人数を掛けるやり方です。たとえば直近1時間で10人の診察が終わっていれば間隔は約6分、待っている人が7人なら目安は約40分です。目安は30分から1時間ごとに更新し、掲示には必ず「何時時点か」を書きます。検査や処置が多い時間帯は間隔が延びるため、目安を短く見せようとせず、やや長めに伝えるほうが、実際に早く呼ばれたときの印象も悪くなりません。
呼び出しの方法とプライバシー
個人情報保護委員会と厚生労働省の「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」は、受付での呼び出しについて、患者の取り違え防止など業務上必要と考えられるとしつつ、医療におけるプライバシー保護の重要性から、患者の希望に応じて一定の配慮をすることが望ましいとしています。受付番号での呼び出しを選べるようにする、表示モニターには氏名ではなく番号を出すなど、順番の見える化とあわせて呼び出し方も見直してください。
WEB QUEUEWeb順番待ちの運用ルール
Web順番待ちは、待合で待つ時間を自宅や車で待つ時間に置き換える仕組みです。導入して終わりではなく、受付の締め切り、呼び出し時に不在だった場合の扱い、予約なしで来院した患者の順番の入れ方などのルールを決め、患者に示しておく必要があります。
受付の開始と締め切りを決める
Webでの順番取りを何時から何時まで受け付けるかを決め、診療の終了時刻との関係を説明します。締め切りの時刻は、混雑の状況で早めることがあるかどうかも書いておきます。
早めの締め切りは事前に告知来院の目安と、不在時の扱いを決める
「順番が〇番前になったら来院してください」などの目安と、呼び出し時に不在だった場合に何番後に呼ぶのかを決め、受付画面と院内掲示に書きます。
全員に同じルールで予約なし・急患の扱いを説明する
窓口で受け付けた患者をWebの順番にどう入れるか、急な症状の患者を先に診ることがあるかを決め、「順番が前後することがあります」と理由とともに示します。
理由があれば不満は減る目安と実際のずれを点検する
呼び出しの目安と実際の呼び入れの時刻がずれていないかを、週に一度確認します。ずれが大きい時間帯は、来院の目安の番数を調整します。
記録で調整する順番予約と時間指定予約の違い、予約システムの比較の観点はクリニックの予約システムの選び方で整理しています。順番が近づいた通知をLINEで送る場合の注意点はLINE公式アカウント活用法を参照してください。
MESSAGES院内掲示・Web・受付での案内文の例
案内文は、待ち時間の目安、順番が前後する理由、待つ場所の選択肢の3つを、短く具体的に書きます。「申し訳ございません」を繰り返すより、患者が次にどうすればよいかが分かる文面のほうが、不満を和らげます。
「大変混み合っております。順番にお呼びしますので、しばらくお待ちください。」
どれくらい待つのか、外に出てよいのか、順番が前後する理由が分からない。
「現在、受付から診察までの目安は約40分です(10時30分時点)。検査や急な症状の方を先にご案内するため、順番が前後することがあります。外出される場合は受付にお声がけください。順番が近づいたら、ご登録の連絡先にお知らせします。」
時刻付きの目安、前後する理由、待つ場所の選択肢がそろっている。
| 場面 | 案内文の例 |
|---|---|
| 受付時(混雑している日) | 「本日は診察まで40分ほどお待ちいただく見込みです。お車や近くでお待ちいただくこともできます。」 |
| 急患などで遅れているとき | 「急な処置が必要な方の対応で、診察が20分ほど遅れています。お急ぎの方は受付にお申し出ください。」 |
| 公式サイトのお知らせ | 「月曜日と祝日明けの午前は混雑します。比較的すいているのは、火曜日から金曜日の午後です。」 |
| Web順番待ちの画面 | 「順番が5番前になったらご来院ください。呼び出し時にいらっしゃらない場合は、3番後にお呼びします。」 |
受付で「あと何人ですか」と聞かれたときに答えられるよう、受付の画面で順番の状況を確認できるようにしておくことも大切です。
BUSY TIMES混雑する時間帯の情報発信
混雑する時間帯を来院前に伝えると、急がない患者がすいている時間を選べるようになり、ピークの待ち時間が和らぎます。案内は、自院で記録した曜日・時間帯ごとのデータをもとに作ります。
Googleマップには、来院者の動きをもとにした「混雑する時間帯」が表示されることがあります。表示の扱いと医院ができることはGoogleマップの「混雑する時間帯」は直せる?で解説しています。これとは別に、医院自身の記録から「比較的すいている時間帯」を公式サイトに書いておくと、患者が受診の計画を立てやすくなります。
- 公式サイト:診療時間のページに、曜日・時間帯ごとの混雑の目安を表で載せる。季節によって変わる場合は、時期ごとに更新する
- Googleビジネスプロフィール:花粉症の時期や予防接種の時期など、混雑が予想される時期の前に、投稿で予約方法や受付の締め切りを案内する
- LINE:連休明けなど混雑が見込まれる日の前に、予約方法や受付時間を配信する
- 院内:会計時に、次回はすいている時間帯をすすめるカードを渡す
Googleマップでの告知はGoogleビジネスプロフィールの投稿で行えます。混雑を避けてもらうための案内であり、受診を急がせる表現や、特典で来院を誘う表現は使わないでください。
REVIEWS待ち時間の口コミへの返信
待ち時間についての口コミには、受診の事実に触れず、ご不便への謝意と、待ち時間の目安の案内や改善の取り組みといった医院の側の事実を伝えます。投稿者だけでなく、口コミを読む他の患者に向けた返信だと考えて書きます。
「〇月〇日の午前は急患が重なり、お待たせしました。〇〇様の検査にも時間がかかったため…」
受診日や検査に触れると、投稿者が患者であることを医院が公に認めることになる。
「ご意見をありがとうございます。お待たせしてしまうことへのご不満を真摯に受け止めています。当院では、受付時に待ち時間の目安をお伝えし、順番が近づいたらお知らせする仕組みを設けています。混雑の目安は公式サイトでもご案内しています。」
受診の事実に触れず、医院の仕組みと情報の場所を伝えている。
返信のプライバシー上の注意はクリニックのGoogle口コミ返信|患者プライバシーを守る例文、低評価への対応の判断は低評価口コミ対応で扱っています。待ち時間の口コミが続く場合は、返信の工夫だけでなく、区間ごとの記録に戻って原因を確認してください。
IMPROVE待ち時間そのものを短くする打ち手
見える化と案内で不満を和らげたうえで、記録で長かった区間から順に、待ち時間そのものを短くする打ち手を選びます。打ち手は区間ごとに異なります。
| 長かった区間 | 打ち手の例 | 確認すること |
|---|---|---|
| 来院から受付完了まで | 電話対応と窓口対応の担当を分ける、予約の変更をWebへ寄せる | 電話が集中する時間帯と窓口の混雑が重なっていないか |
| 受付完了から診察開始まで | 予約枠の人数の見直し、初診の問診を来院前に済ませる、急患用の枠を確保 | 枠の人数と実際の診療時間のずれ |
| 検査・処置の待ち | 検査の段取りの見直し、検査が必要な患者の予約時間を分ける | 検査の担当者と機器の空き状況 |
| 診察終了から会計まで | 会計の入力の流れの見直し、支払い方法の選択肢を増やす | 会計の待ちが特定の時間に集中していないか |
| Web順番待ちのずれ | 来院の目安の番数を時間帯ごとに調整 | 目安と実際の呼び入れ時刻の差 |
電話対応の負担が受付の待ちを生んでいる場合は、電話予約とWeb予約の役割分担、時間指定予約で無断キャンセルが診療のペースを乱している場合は、無断キャンセル対策もあわせて見直してください。
改善策を実施したら、同じ方法で区間ごとの時刻を2週間ほど記録し、実施前と比べます。複数の改善を同時に始めると、どれが効いたのか分からなくなるため、1つずつ順番に進めるのが確実です。花粉症や感染症の流行期など、季節によって患者数が大きく変わる診療科では、前年の同じ時期の記録とも比べてください。
COMMON MISTAKES待ち時間対策でよくある失敗6つ
どこで待っているか分かりません。区間ごとに時刻を記録します。
見通しが立たず不満が増えます。時刻付きの目安と理由を書きます。
「後から来た人が先に」という不満になります。理由を掲示で先に伝えます。
不在時の扱いなどで揉めます。画面と院内掲示に同じルールを書きます。
患者のプライバシーを損ないます。医院の仕組みの事実だけを伝えます。
プライバシーへの配慮が足りません。番号での呼び出しを選べるようにします。
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FAQよくある質問
クリニックの待ち時間は、平均でどれくらいですか?
順番待ちシステムを入れれば、待ち時間は短くなりますか?
名前で呼び出すのはやめたほうがよいですか?
「後から来た人が先に呼ばれた」と言われたら、どう説明しますか?
待ち時間が長いという口コミには、どう返信すればよいですか?
混雑状況をSNSやLINEで発信してもよいですか?
予約制にすれば、待ち時間はなくなりますか?
SUMMARYまとめ|測って短くし、見通しを伝える
今日から進めるならこの順番
待ち時間の不満は、時間の長さと、見通しのなさの掛け算で大きくなります。記録で原因を特定して時間を短くしつつ、目安と理由を伝えて待つ場所を選べるようにすれば、同じ待ち時間でも患者の受け止め方は変わります。予約方式の見直しは予約システムの選び方から始めてください。
待ち時間の口コミと、来院前に伝わる情報をまとめて点検します
Googleビジネスプロフィールの診療時間・予約リンク・投稿・口コミへの返信と、公式サイトの案内を照合し、待ち時間の見通しを来院前に伝えるために直す箇所をお渡しします。
無料MEO診断の案内を見る →- 厚生労働省「令和5(2023)年受療行動調査(確定数)の概況」(PDF)(2025年3月14日公表、2026年10月15日確認)
- 個人情報保護委員会・厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」(2026年10月15日確認)
本記事は一般的な運用情報であり、待ち時間の短縮や口コミ評価の改善、Googleでの表示、集患の効果を保証するものではありません。
対象:日本国内のクリニック・診療所における待ち時間の把握と案内。受療行動調査は一般病院の患者を対象とした調査であり、診療所の数値を示すものではありません。

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