「証拠」「Googleへの報告」「相談先」の順番を整える
「事実無根の内容で、医師の名前を挙げて誹謗中傷されている」「同じ人物から繰り返し投稿されている」。こうした口コミに対して、いきなり法的対応を考えるのは自然ですが、その前に院内で整理しておくことがあります。証拠を正しく保存すること、Googleの公式手順での報告を並行すること、公的な相談窓口を知っておくこと、そして弁護士に相談するときに持参する資料をそろえることです。本記事では、法的対応の要否そのものは扱わず、相談の前に院が整理すべきことを順番に示します。
- 法的対応を検討する口コミに対して、返信での反論、投稿者への直接連絡、削除と引き換えの交渉は行わない。状況を悪化させ、証拠としての価値も損なう
- 証拠は、口コミのURL、表示日時、投稿者の表示名、本文、評価、院の返信の有無が分かる形で、改変せずに保存する。日付が分かる方法で複数回保存する
- Googleへの報告(ポリシー違反の申し立て)は、法的対応と並行できる。判断はGoogleが行い、削除されなかったことが法的判断を意味するわけではない
- 総務省は、インターネット上の権利侵害への対応として、情報流通プラットフォーム対処法(旧プロバイダ責任制限法)に関する情報と、違法・有害情報相談センターの案内を公開している
- 弁護士への相談時は、証拠、院の対応の記録、投稿の時系列、院と投稿者の関係(患者かどうか、受診記録の有無)を整理して持参する。受診記録の扱いは個人情報の観点で慎重に
法的相談の前に、院内の記録と対応の整理を一緒に行いたい方へ
証拠の保存状況、Googleへの報告の記録、対応の時系列を確認し、相談時に持参できる形に整理します(法的判断は行いません)。
無料MEO診断の内容を見る →最終確認日:2026年9月16日。Googleの報告手順、総務省・法務省の相談窓口、関連する法制度は更新されることがあります。本記事は法的助言ではなく、個別の事案での法的対応の要否・方法は弁護士にご相談ください。
SCOPEこの記事で扱うこと・扱わないこと
証拠の保存方法、Googleへの報告との順番、公的な相談窓口の存在、弁護士相談に持参する資料の整理、院内での対応の記録。
運用の範囲で「相談の前に整えること」。
名誉毀損・業務妨害などに該当するかの判断、発信者情報の開示請求や削除請求の手続きの詳細、損害賠償の見込み、弁護士の選び方。
これらは弁護士にご相談ください。
患者本人から「自分の口コミを消したい」と相談される場面は、本記事とは別の対応になります(患者本人による口コミの編集・削除の案内)。院が法的対応を検討するのは、Googleへの報告や型どおりの返信では対応しきれない場面です。多くの低評価は、この記事の対象ではなく、低評価口コミ対応の範囲で対処できます。金銭要求を伴う場合の初動は口コミで金銭を要求されたときをご覧ください。
誹謗中傷への対応は、院と医師・スタッフの権利を守るためのものです。低評価を減らす、評価点を上げる、という目的で法的対応を検討することは、費用と時間に見合わず、対応の判断も誤らせます。
DON’T最初にしてはいけないこと
深刻な口コミを見つけた直後は、感情的な行動が起きやすい場面です。次の行動は、状況を悪化させるか、証拠としての価値を損ないます。
| 行動 | 起きること |
|---|---|
| 返信で詳細に反論する | 経緯の説明が個人情報の露出につながる。第三者には言い争いに見える。返信自体が新たな争点になる |
| 投稿者に直接連絡して削除を求める | 脅迫や強要と受け取られるリスク。Googleのポリシーが禁じる「削除と引き換えの便宜」にも近づく |
| 投稿者を特定しようと院内の記録を探る | 受診記録の目的外利用として個人情報の問題になり得る |
| SNSや公式サイトで「事実無根の口コミがある」と発信する | 注目を集め、投稿者を刺激する。院の主張が広告表現の問題になることもある |
| 削除と引き換えに金銭や便宜を提示する | ポリシー違反。相手が金銭要求をしている場合は、応じることで繰り返される |
| スタッフや家族に反論の口コミを書かせる | 利益相反として別のポリシー違反になる |
スタッフや家族に反論の口コミを書かせることが別の違反になる理由は身内の口コミがNGな理由で扱っています。担当者が最初にすべきことは、何もせずに院長・事務長へ報告し、証拠を保存することです。返信するかどうか、報告するかどうか、相談するかどうかは、承認者が分岐表に沿って判断します。分岐の考え方は口コミ対応ルールブックの作り方で扱っています。
EVIDENCE証拠の保存
口コミは、投稿者による編集・削除、Googleによる非表示で、いつでも変わり得ます。相談の時点で口コミが残っているとは限らないため、最初に保存します。
保存する内容
- 口コミのURL(口コミを共有する機能で取得できる個別のURL)
- 口コミの本文全体、評価(星)、投稿者の表示名、投稿日の表示
- 院のプロフィール名と、その口コミが自院に対するものだと分かる画面全体
- 院の返信の有無と内容
- 保存した日時(画面に日時が写る形、またはファイルの作成日時)
- 同一人物と思われる複数の投稿があれば、それぞれ
保存の方法
| 方法 | 利点 | 注意 |
|---|---|---|
| 画面のスクリーンショット(パソコン・スマートフォン) | すぐできる | URLと日時が画面に写るようにする。画像を加工しない |
| ページ全体をPDFで保存 | URLと日時がヘッダー・フッターに入る | ブラウザの印刷機能で「PDFに保存」 |
| 複数日に分けて保存 | 投稿が継続していることの記録になる | 日付ごとにファイル名を分ける |
| 第三者による保存 | 改変の疑いを避けられる | 必要性は弁護士に確認 |
保存したファイルは、院長・事務長だけがアクセスできるフォルダに置き、通常の口コミの記録シートとは分けます。保存した日時と方法を記録します。控えのフォルダの設計はプロフィール情報の控え方をご覧ください。
受診記録との照合は、この段階では行わないでください。
「この投稿者は本当に患者か」を確かめるために院内の記録を検索することは、受診記録の目的外利用として個人情報の観点で問題になり得ます。照合が必要かどうか、必要な場合の方法は、弁護士に相談してから判断します。
REPORTGoogleへの報告との順番
Googleへの報告(ポリシー違反の申し立て)と、法的対応の検討は、並行して進められます。どちらかを待つ必要はありません。
| 項目 | Googleへの報告 | 法的対応の検討 |
|---|---|---|
| 目的 | ポリシー違反のコンテンツの削除をGoogleに判断してもらう | 権利侵害への法的な救済 |
| 判断する主体 | 裁判所、または当事者間の手続き | |
| 基準 | Googleマップのポリシー(誹謗中傷、個人情報、脅迫、金銭要求など) | 法律(名誉毀損、業務妨害など) |
| 結果の意味 | 削除されなくても、法的に問題がないと判断されたわけではない | — |
| 証拠への影響 | 削除されると口コミが見えなくなる。報告前に証拠を保存しておく | 証拠は保存済みのものを使う |
報告の前に必ず証拠を保存します。報告の手順と、報告の対象になるポリシー違反の種類は削除依頼の手順で扱っています。Googleは否定的な口コミによる恐喝詐欺を報告する仕組みも案内しており、金銭要求を伴う場合はそちらの手順も確認します。
LEGAL FRAMEWORK情報流通プラットフォーム対処法の位置づけ
総務省は、インターネット上の権利侵害への対応に関する情報を公開しています。旧プロバイダ責任制限法は、法改正により「情報流通プラットフォーム対処法」へ改められ、大規模なプラットフォーム事業者に対する削除申出への対応の迅速化や運用状況の透明化に関する規律が設けられています。
院が知っておくべきポイントは次の3つです。制度の詳細と、自院の事案への当てはめは、弁護士にご確認ください。
- 権利を侵害する投稿について、プラットフォーム事業者への削除の申出と、発信者情報の開示を求める手続きの枠組みが法律で定められている
- Googleの管理画面からの「報告」は、Googleのポリシーに基づく審査であり、法律に基づく削除申出や開示請求とは別の手続き
- 法律に基づく手続きには要件と期間があり、証拠の保存と、投稿の時系列の整理が前提になる
総務省のページには、法制度の概要に加えて、相談窓口の案内が掲載されています。制度の名称や内容は改正されることがあるため、相談時には最新の情報を確認してください。
WINDOWS公的な相談窓口
弁護士に相談する前、または並行して、公的な相談窓口を使う選択肢があります。
| 窓口 | 運営 | 扱う内容の目安 |
|---|---|---|
| 違法・有害情報相談センター | 総務省の支援事業 | インターネット上の違法・有害情報に関する相談。対応方法の助言 |
| インターネット人権相談受付窓口 | 法務省 | インターネット上の人権侵害に関する相談 |
| 警察相談専用電話(#9110) | 警察 | 脅迫・恐喝など犯罪の可能性がある場合の相談 |
| 都道府県の医師会・保険医協会 | 各団体 | 会員向けの法律相談を設けている場合がある |
各窓口の対応範囲、受付方法、費用は、それぞれの案内で確認してください。窓口は「何をすべきかの方向性」を得る場所であり、個別の法的手続きを代行する場所ではありません。金銭要求や脅迫を含む場合は、警察への相談を早い段階で検討します。
PREPARE弁護士相談に持参する資料
相談の時間を有効に使うため、院内で整理してから持参します。
- 保存した証拠(スクリーンショット、PDF)と保存日時の一覧
- 投稿の時系列(初回投稿日、編集、追加投稿、削除の有無)
- 院の対応の記録(返信の有無と内容、Googleへの報告の日付と結果)
- 投稿者と院の関係について、院として把握している範囲(患者かどうか分からない、など)
- 院が被っている影響(電話での問い合わせ、他の患者からの指摘、スタッフへの影響)
- 院のプロフィールの基本情報(院名、所在地、開設者)
- 受診記録やカルテは、弁護士から求められるまで持ち出さない(個人情報)
- 投稿者の特定を目的に院内で調べた情報は、調べ方が適切だったかを含めて相談する
- スタッフの私的な情報(SNSアカウントなど)を無断で持ち出さない
相談の結果、法的対応をしないという判断になることもあります。その場合も、証拠と記録は保管し、投稿が継続するなら定期的に保存を続けます。
6 STEPS相談までの6ステップ
担当者は何もせず、承認者に報告する
返信も、投稿者への連絡も、院内記録の検索も行いません。口コミのURLを添えて、院長・事務長に報告します。
当日証拠を保存する
URL・日時・本文・評価・表示名・返信の有無が分かる形で、スクリーンショットとPDFを保存します。院長・事務長だけのフォルダに置きます。
改変しないGoogleへの報告を検討し、実施する
ポリシー違反に該当するかを確認し、該当すれば公式手順で報告します。報告日を記録します。
証拠保存の後に公的窓口で方向性を確認する
違法・有害情報相談センターや法務省の窓口で、対応の方向性を相談します。金銭要求や脅迫を含む場合は警察への相談も検討します。
並行可資料を整理して弁護士に相談する
証拠、時系列、対応の記録、院の把握している範囲、影響を整理して持参します。受診記録は求められるまで持ち出しません。
法的判断は弁護士へ判断と結果を記録し、ルールブックを見直す
相談の結果と院の判断を記録します。同種の事案に備えて、ルールブックの分岐Dの手順を更新します。
改訂日を記録COMMON MISTAKESよくある失敗6つ
個人情報の露出と、新たな争点を生みます。返信は承認者の判断まで保留します。
削除されると口コミが見えなくなります。保存が先です。
受診記録の目的外利用になり得ます。照合の要否は弁護士に確認してからです。
Googleの判断はポリシーに基づくもので、法的判断とは別です。
脅迫や強要と受け取られるリスクがあり、削除と引き換えの便宜にも近づきます。
個人情報を含む資料になります。院長・事務長だけのフォルダに分けます。
関連ページも同時に確認
FAQよくある質問
名誉毀損に当たるかどうか、院内で判断できますか?
Googleへの報告と弁護士相談は、どちらを先にすべきですか?
投稿者が患者かどうかを、院内の記録で確認してもよいですか?
公的な相談窓口は、削除や開示の手続きを代行してくれますか?
「情報流通プラットフォーム対処法」とは何ですか?
法的対応をしないと決めた場合、証拠は捨ててよいですか?
弁護士費用の目安を教えてください。
SUMMARYまとめ|何もせず報告、証拠を保存、並行して報告と相談
今日から進めるならこの順番
深刻な口コミへの対応で最も重要なのは、最初の数日に何をしないかです。反論せず、連絡せず、記録を探らず、証拠を保存して、報告と相談を並行する。この順番が院内で決まっていれば、感情的な初動で状況を悪化させることなく、必要な判断を専門家に委ねられます。口コミ運用の全体像はクリニックのGoogle口コミ対策にまとめています。
相談の前に、院内の記録と対応の時系列を整理します
証拠の保存状況、Googleへの報告の記録、対応の時系列、ルールブックの分岐Dの手順を確認し、相談時に持参できる形に整理してお渡しします(法的判断は行いません)。
無料MEO診断の案内を見る →- 総務省「インターネット上の違法・有害情報に対する対応(情報流通プラットフォーム対処法)」(2026年9月16日確認)
- 違法・有害情報相談センター(2026年9月16日確認)
- 法務省「インターネット人権相談受付窓口」(2026年9月16日確認)
- Google マップ「禁止または制限されているコンテンツ」(2026年9月16日確認)
- Google ビジネス プロフィール ヘルプ「ユーザーからのクチコミを管理する」(2026年9月16日確認)
- 個人情報保護委員会「個人情報保護法等」(2026年9月16日確認)
本記事は一般的な運用情報であり、法的助言ではありません。Googleによる表示や審査・対応の結果、および法的対応の結果を保証するものではありません。
対象:日本国内のクリニックにおける一般的なGoogle口コミ運用。名誉毀損等への該当性、法的手続きの要否・方法は弁護士にご相談ください。制度の内容は改正されることがあります。

コメント